相続 東京の研究所

投資信託はわざわざ多数の投資家を募るのである。
理由は「お金がない」からである。 株式の投資信託を例にとろう。
わが国の代表的な株式市場である東京証券取引所の第1部には約1400の銘柄が上場されている。 それらの銘柄のどれか1銘柄が気に入ったとしよう。

ある1銘柄を購入するためには安くて数十万円、高いものになると数百万円必要だ。 個人投資家が買おうとしても、安い銘柄をl〜2銘柄買えるかどうかである。
l銘柄数百万円と言われれば手が出ない。 いくつか気に入った銘柄で分散投資するなんて夢のまた夢である。
ここまでくれば当然のごとくに、あるアイデアがひらめくはずだ。 「個人ではお金が足りないのなら、みんなで持ち寄って大きな額にして多くの銘柄を購入すればいい!」。
そのとおりである。 このようなアイデアに基づいて投資信託ができあがったのである。
しっかりと保護された「信託」という、一種の口座にみんなのお金を集め、プロのファンドマネージャーがそのお金を用いて投資を行うのである。 現在、日本では1000をはるかに超える投資信託が存在する。
新聞やマネー雑誌には毎日多くの広告が掲載されている。 「過去1年間で○○%の高い利回りをあげました!」とか「日経225のパフォーマンスを△△%も上回りました!」といった内容である。
どれも「こんなに上昇しました」ということを表明しているのだ。 どこにリスクは潜んでいるのであろうか。
一段目の直接的なリスクは「値下がり」である。 「値下がる」ことがわかっているならば、投資信託は購入せず「値上がる(変な言い方だが……)」投資信託だけ買えばいいのだ。
簡単なことである。 問題は二段目の間接的リスクだ。

「値上がる」「値下がる」という予想そのものが不確かであるというリスクである。 実際の投資信託を見てみよう。
表−2はAからEまでの5つの投資信託(日本の株式)について毎月のパフォーマンスを記した星取表である。 データは1999年の1月から12月までの実際のものである。
いずれも日経225のパフォーマンスを上回ると白星、下回ると黒星と表記した。 これら5つの投資信託の評価を行おう。
どれが一番かを選ぶのである。 金融工学的分析を行うには、標準偏差だのインフォメーション・レシオだのテクニカル・タイムが跳梁賊眉するのだが、ここはもう少し原始的に行こう。
賢明な読者なら気づかれたであろう。 「なぜ日経225のパフォーマンスと比較するのだ?なぜ日経225を上回れば白星で下回れば黒星なのだ?」。
日経225とは東京証券取引所(日本の代表的な株式市場)に上場している、すなわち売買の対象になっている約400の銘柄から225種類の銘柄を選んだものである。 テレビや新聞のニュースで「本日の日経平均は○○円で取引を終えました」とか言っているアレだ。
225種類もの銘柄があれば、値上がりする銘柄もあれば、値下がりする銘柄もある。 それらをまとめると株式市場全体の動きと非常に似通った動きとなる。
225種類の値動きによって日本の株式市場の動きが把握できるのである。 なぜ日経225と比較するのか?実はほかに比較する適当な指標がないからである。
株式の投資信託がプラスの収益をあげたら白星、損を出したら黒星という「収益がプラスなのかマイナスなのか」という考え方、すなわち絶対値で収益の状況を把握する方法があるではないか。 なのにどうして日経225などと「比較」するのか?実は絶対値による考え方には不都合が生じる可能性があるのだ。

ある株式投信が2%の収益率をあげたとしよう。 1万円で200円の収益である。
バンザイである。 しかし、ほかの株式投信が軒並み20%の収益をあげていたら、バンザイどころではない。
「みんな20%なのに、自分のだけは2%」という状態である。 これでは負けも同然だ。絶対収益ベースの比較には限界があるのだ。
絶対収益ベースの考え方の弱点を補うのが日経225と比較するという考え方である。 比較基準という意味の英語を使って「ベンチマークと比較する」とも言う。
株式市場が(すなわち日経225が)何%の上昇をしたのかを算出し、それに対して株式投信の収益率が上回っていれば白星、下回っていれば黒星なのである。 ベンチマーク比較にも問題点はある。
日経225が.10%で、株式投信が.5%だったら「白星」になってしまうのだ。 株式投信が1万円から5%減らして9500円になったとしても白星なのだ。
日経225と同じように運用していたら1万円が9000円になっていたのだから、それよりはマシなので白星なのだ。 お金は減っているのに「もっとひどい結果を生むよりはマシだろう」と言われて納得させられている感がある。
オリンピックの花形といえばマラソン競技である。 「順位は関係ありません。

2時間8分をきることが目標です」と言う記録重視型の選手もいれば、「今日は記録にはこだわらず勝ちにいきます」と言う勝負重視型の選手もいる。 記録重視型の選手は株式投信でいえば絶対収益ベースの選手である。
プラスの収益をあげたかどうかにこだわる。 ほかの投資信託がどのような成績をあげたか、結果としてメダルに手が届くかどうかは関係ない。
一方、勝負重視型の選手はベンチマーク派である。 一長一短なのだが、最近はベンチマーク派が優勢である。
バブル崩壊以降のように株式市場全体がマイナスになっている時にプラスの収益をあげることはかなり難しい。 無謀な投資が行われ、かえってリスクを高めてしまうことすらありうる。
株式市場がマイナスになると思えば株式投信を購入しなければよいのであり、いざ株式投信の購入を決めたからには、株式市場よりもよい成績をあげる投信を購入することに意識を集中すべきである。 株式投信のファンドマネージャーは「購入していただいたからには、株式市場の動きを表す日経225を上回るように頑張ります!」と言っているほうが理にかなっているのだ。
よってベンチマークすなわち日経225を基準にして白星と黒星が決定されるのである。 表全体を見渡してC投信が最も成績がよくD投信が最もお近づきになりたくないことは誰でもわかる。
問題は残りのA、B、E投信である。 A投信とB投信の比較から始めよう。

どちらも6勝6敗である。 白星の数では同じである。
違いは、A投信は勝ち負けが交互に現れているのに対して、B投信は勝つ時は勝ち続ける、負ける時は負け続けるというふうに勝負の結果が連続している点である。 このような連続する性質を、前回の結果が次回に影響している点をとらえ、格調高く時系列相関が高いという。
前の結果に次の結果が影響されるのだ。 精神的に弱い投信なのである。
一度負けると自信を失って負け続けるのだ。 でも、一度勝ち始めると勝ち続けるお調子者でもある。
精神面を鍛えるために山ごもりとかすべき投信なのである。 A投信とB投信のどっちがいいのか?B投資信託は翌月も負ける確率が高く、勝ち負けが交互に現れるA投資信託のほうが、まだましである。
とはいえ、A投資信託は勝負の結果が交互に出てくるだけに勝つのか負けるのかがよくわからないので、その予想は不安定にならざるをえない。 できればどちらも購入したくないものだ。

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